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孫子 海音寺潮五郎
孫子 (講談社文庫 か 1-1)
孫子
海音寺 潮五郎(著)

兵法のカリスマを描いた歴史小説。

友人の将軍にだまされて敵国の罠にかかり、両足を失ってしまった孫ピン。彼は持ち前の明晰な頭脳を駆使して、敵国を、そして将軍を追い詰め、復讐をはかります。

古代中国を舞台にした兵法合戦は読み応え十分。「春秋左氏伝」「呉越春秋」「史記」などをもとに書かれています。前半は孫武の人生を、後半は孫ピンの人生を扱った2部構成となっています。

前半の孫武のほうがわりと有名ですが、個人的には後半の孫ピンの復讐劇に、手に汗を握ってしまいます。
author:あーりー, category:外国が舞台の歴史小説, 17:52
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戦争と平和 トルストイ(著)
戦争と平和〈1〉
戦争と平和〈1〉

『戦争と平和』は、言わずと知れたロシアの文豪トルストイの長編小説です。歴史小説というよりも時代小説に近いですが、ナポレオンやロシア皇帝など実在の人物も活躍しますし、一応、歴史小説として感想を書いてみたいと思います。

そういえば先日なにかのテレビ番組で、女優の菅野美穂さんが「V6の岡田准一くんはドラマ撮影の休憩時間に『戦争と平和』を読んでいる」と話していました。

それはさておき。小説の舞台は19世紀初頭のロシア。ヨーロッパ諸国を制圧したナポレオンの脅威が、いよいよロシアにも迫ってくる、という時代です。いわゆる「ナポレオン戦争」時代のロシアの人々を描いた作品です。

歴史の教科書でおなじみの「アウステルリッツの三帝会戦」や「ナポレオンのロシア遠征」などの軍事的な出来事はもちろん、少年と少女の初恋の行方、青年の夢と挫折など、当時のロシアの貴族社会をとても細かく、丁寧に描いています。本当にひとりひとり、丁寧に。

ひとつの国家というのは、こうした小さな個人の集合なんだということをすごく感じました。

小さな個人の人生がたくさん集まって、ひとつの国家の動きをつくる。その国家が絡みあってぶつかりあって、ヨーロッパの激動をつくる。その激動が、歴史になっていく。

そこで「歴史を動かしているのは、誰なんだろう」と思うんです。この小説にはナポレオンが登場します。フランス革命の寵児。英雄です。歴史の渦のド真ん中にいた人物です。

じゃあナポレオンが歴史を動かしているのかというと、そうでもないんじゃないかと思うんです。むしろ歴史に動かされているような…

人々の小さな生活のひとつひとつが歴史そのものの鼓動で、それが脈打つごとに波が大きくなっていくという印象を受けました。

ナポレオンはその波に乗るサーファーです。どれだけ目立ってみても、サーファーには波を起こす力はありません。波の上で一番うまく踊れた人が英雄と呼ばれるんですね。

波を起こしているのは、たくさんの普通の人々。初恋をしたり、お酒を飲んだり、友人とケンカしたり、夢を語り合ったりしているフツーの人々。彼らのフツーの人生の集まりが、歴史のエネルギーになっていく。そういうことを考えさせられる小説でした。

◇関連リンク
戦争と平和〈1〉
戦争と平和〈2〉
戦争と平和〈3〉
戦争と平和〈4〉
戦争と平和〈5〉
戦争と平和〈6〉
author:あーりー, category:外国が舞台の歴史小説, 18:41
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項羽と劉邦 司馬遼太郎(著)
項羽と劉邦 (上)
項羽と劉邦〈中〉
項羽と劉邦〈下〉
司馬遼太郎(著)

大人物をさして、器が大きい、といいます。劉邦の場合、器の底が抜けています。底抜けの大器。気持ちいいくらい底が抜けています。

もしかすると器ではなく、もっと大きな入れ物、たとえば海とか宇宙とか、そういう表現がしっくりくるかも知れません。

物語は、秦の始皇帝の時代が終わろうとする頃からはじまります。

混乱する中国にふたりの英雄が登場しました。武勇の項羽と、人望の劉邦。

今うっかり人望の劉邦と書きましたが、彼の行動だけをピックアップしてながめてみると、「なぜこんな人物に人望が集まるんだろう」と不思議になります。

30歳を過ぎてもいっこうに働こうとしない。毎日仲間と酒ばかり飲んでいる。仕事についてもマジメに働かず、職場放棄して行方をくらます。敵に追われたときは、馬車を軽くするために自分の子供を置き去りにして逃げる――

こうしてみると、なかなかとんでもない人間です。とても人望があるとは思えません。でも、あるんです。

戦争の天才、政略の天才、内政の天才。たくさんの優秀な人間が劉邦のもとに集まってきます。規格外の魅力、想定外の魅力が劉邦にはあります。

本書には、同時代の人々を魅了した劉邦の不思議なフェロモンがいっぱい詰まっています。
author:あーりー, category:外国が舞台の歴史小説, 15:41
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