
司馬遼太郎(著)
「刀は美人よりもうつくしい」
主人公、土方歳三の言葉です。
幕末の京都に、新選組という戦闘集団がいました。
歳三はその副長をつとめた剣の達人です。彼は志士でも政治家でもなく、ただ「職人」であろうとしました。
組織づくりの「職人」として、新選組を天下第一の喧嘩屋に育て上げようとしました。
思想とか、政治とか、天下の情勢とか、そういったものには目もくれず、純粋に「職人」として仕事に打ち込む。その凛とした姿勢は、刀よりもまっすぐに輝いています。
歳三は新選組局長の近藤勇にいいます。
「われわれは、節義、ということだけでいこう」
日々動く政治というものに左右されていては腰がぐらついて定まらず、何度も変色しなくてはいけない。だからそれには左右されず、ただ節義一本で自分たちの本領に打ち込もう、と。
スラリとのびる刀のうつくしさが、歳三のまっすぐさと重なりました。刀は人を殺す道具です。ただ人を斬るためだけに存在する。その単純さが美しいと歳三はいいます。
節義一本に生きようとする歳三も、刀とおなじように美しいと感じました。
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