武田三代 (文春文庫)
新田次郎の短編集『武田三代』におさめられている「信虎の最期」を読みました。
<あらすじ>
タカ狩りのとき、タカの扱いが悪いという理由で部下を斬る。
その帰り道、吠えついてきた犬の飼い主を斬る。
さらに、それを制止しようとした部下2人を斬る。
武田信虎の狂刀は、おさまる気配がありません。武田信虎はとうとう家臣に愛想をつかされ、計略によって国を追われてしまいます。
その信虎が33年ぶりに武田領へと戻ってきました。家臣たちは動揺します。信虎は家臣たちとの面会の席でまたも刀を抜きます。
<感想>
『武田三代』には全部で7つの短編が収録されています。「信虎の最期」は昭和50年に発表されており、7編の中で一番最後に書かれた作品です。長編小説『武田信玄』よりもあとに書かれたということになりますね。
武田氏の戦術・戦略を著した軍学書「甲陽軍鑑」には、信虎の死のことが書かれています。
そこにはただ“信虎公やがてご他界なり”と記されているだけです。この一行をふくらませたのが、短編「信虎の最期」です。
信虎が武田家臣団に毒舌を浴びせるシーンがあります。面と向かってあの武田家臣団をこうもコキ下ろせる人物は、信虎しかいないように思います。
見せ場は、なんといっても信虎の死の真相です。最後のサプライズでこの短編がいっそう引き締まった印象を受けました。
『武田三代』に収録されている他の作品、目次についてはコチラをどうぞ。