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武田信玄の男女問題に振り回される男
風林火山 (新潮文庫)
風林火山 (新潮文庫)
井上 靖(著)

読書日記。第8章まで読んだ感想です。

武田晴信(信玄)は底の知れない大きさをもっていますね。とぼけているようで、しっかり計算しています。

はじめは勘助がついていないと何となく頼りない、という印象を受けたんですが、今は違います。

勘助も合戦での晴信の成長を頼もしく見ています。

ただ、

晴信の成長は、合戦の場にとどまりません。

今や女性関係もお手の物です。

男女間のことになると、勘助はまったく晴信に振り回されっぱなしです。

勘助は、少しは慎んで下さい、と意見するつもりで晴信のもとを訪れます。

しかし、

いつの間にか晴信に話をリードされ、結局一言も意見できないまま、晴信の男女のゴタゴタを始末する役目をまかされてしまいます。

帰り道、おれは何をしに行ったんだろうと首をひねる勘助が微笑ましいですね。

その直後。

長尾景虎(上杉謙信)との戦いの話になると、先ほどとは打って変わって勘助の頭脳は冴えわたります。素敵なコントラスト。
author:あーりー, category:戦国時代(山本勘助の歴史小説), 09:50
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山本勘助流 ギャップの魅力
風林火山 (新潮文庫)
風林火山 (新潮文庫)
井上 靖(著)

読書日記。第5章まで読んだ感想です。

勘助の人生は、今川領で無為に過ごした9年間がウソのように、充実しはじめました。

勘助は武田晴信という大将を愛しているし、その側室の由布姫も愛しています。そしてそれ以上に、2人の間にできた四郎勝頼を愛しています。

生きる場所を見つけたんですね。

ということはつまり、死ぬ場所をみつけたということでもあります。

晴信や由布姫らの存在は、勘助にとって「唯一つの、美しい壮大な夢」となりました。順風満帆。

しかし。

思わぬピンチが勘助を襲います。

いいですね、この衝撃的な展開。

本来、勘助の頭脳は冴えています。どんな難問でも「事の真相が自然にすうっと頭の中に浮かんで」きます。

ところが今度ばかりは「一切が五里霧中」で、「ただ恐怖と絶望だけ」が勘助の心を占めています。

普段はダイヤモンドのように冴えわたっている勘助の頭脳がここまで追い詰められるのを見るのも、ときにはいいですね。

天才イチローが凡ミスするのを見たときのように、少しだけお得な気分になります。

普段が完璧であってこそ生きるギャップの魅力ですね。
author:あーりー, category:戦国時代(山本勘助の歴史小説), 22:30
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山本勘助 人に嫌われても気にならない生き方
風林火山 (新潮文庫)
風林火山 (新潮文庫)
井上 靖(著)

読書日記。第3章までの感想です。

山本勘助は人にどう思われてもあまり気にしないところがあります。

勘助は板垣信方に好意を持たれていました。

信方は勘助にとって、武田家臣団の中でただ一人の味方といってもいい存在です。

ところが。

勘助はあるとき信方から非難されて冷たい目で見られます。

それでも勘助は少しも気にせず、「相変らずどこを見ているか判らぬ顔つき」をしていました。

このとき勘助は「信方の言葉など受けつけぬ熱心さ」で、敵の城を攻略する手はずを考えていたんです。

仕事に夢中です。

これまで世間の日陰を歩いてきた勘助にとって、仕事に没頭することがほとんど唯一、自分を守り、自分を保つ方法だったのかも知れません。

その延長でしょうか。

勘助は人から好かれたり、ちやほやされることよりも、自分の能力が実証されることのほうを喜びます。

自分の読みが当たった時に、満足感を覚えます。

勘助ははじめて甲斐に迎えられたとき、至れり尽くせりの待遇を受けました。

しかし、それよりも「甲斐の国の自然も地形も、彼が幾度も頭に描いていたものと殆ど違わなかった」ことのほうに満足しました。

また、

主君・晴信に進言を採用されたときも、そのこと自体より「自分だけが晴信の心の内側に跳び込めた」ことのほうに満足します。

知恵を働かせ、先を読み、それがきれいに決まるときに充実感を覚えるんですね。

どんなことに満足するかによって、その人が人生のどこに重心を置いているかがある程度わかるような感じがして面白いですね。
author:あーりー, category:戦国時代(山本勘助の歴史小説), 22:29
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